相続した日本の空き家不動産と深刻化する空き家問題 ~ 米国と異なる日本の不動産市場。早めの対策で後々のトラブルを未然に ~

日本において空き家問題が深刻化しています。その数は2023年時点で900万2千戸(総務省統計局「令和5(2023)年住宅・土地統計調査」による)と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加で過去最多となっており、ほぼ7軒に1軒が空き家になっています。もちろん都市圏と地方圏ではその率は異なり、最も高い甲信、四国地域では20%前後、最も低い関東(埼玉、東京、神奈川)では10%台となっています。私が住む東京都内においてもおよそ10件に1件が空き家ということになり、街中を歩いていても一目で人が住んでいないとわかる空き家をすぐに見つけることができます。

米国居住者の中にも日本で空き家を所有している、または(特に相続などで)空き家を所有する可能性のある人がいることでしょう。そこで今回は空き家に関する問題や、今から考えておくべき点について紹介します。 

1.空き家の原因

空き家となる主な原因は以下の通りです。

  1. 人口が減少し世帯数が総住宅数を下回る状況となっている

  2. 高齢化に伴い、介護が必要となった高齢者が高齢者施設または子などの親族の家へ移ることになり自宅を離れる状況になっている

  3. 日本では住居について新築を好む傾向があり新築物件が継続して販売される一方で、中古住宅の流通が今一つ伸びない

一方空き家の所有者の取得理由について調査した結果(国土交通省「2019年空家実態調査」による)では、①相続:54.6%(52.3%←カッコ内は2014年同調査結果)、②新築した・新築を購入した:19.3%(23.4%)、③中古を購入した:14%(16.8%)、となっています。冒頭の「令和5(2023)年住宅・土地統計調査」とこの「2019年空家実態調査」の調査対象年度は一致しているわけではありませんが、両調査結果からここ数年の傾向について、新築や中古不動産の購入取得数は減っているものの、それを上回る相続による空家の取得数が増えていることがわかります。

今後ますます高齢化が進む中では、相続により空き家を所有する人の数もさらに増えていくことが予想され、今のうちからその問題点と対策を知っておく事が大切です。

2.空き家の問題点(デメリット)

空き家を保有するデメリットとして如何があげられます。

  • 維持のためのコスト負担

固定資産税、光熱費、管理委託費、修繕費、など

  • 各種リスクによる損害賠償の危険性

空き家からの失火、不審者が住み着くことによる治安の悪化、草木の隣家への侵入など

  • 共有持ち分による親族との揉め事

費用や税金の負担について。世代が進むと持ち分がより複雑化

3.対策

現状の空き家状態を回避する方法としては「自分達で住む」「売却する」「賃貸する」のが基本となります。しかしその実現については容易ではなく解決しなければならない点がありますので、そうした点を確認した上で対応方法を考えます。

  • 自分達で住む

近い将来日本へ帰国する予定があったり、日本国内の親族がいればそのまま居住するという選択肢もあります。ただし既に場所が決められており、立地の利便性(交通機関、仕事や学校、公共施設や商業施設など)はどうか?また築年数が経っている場合十分な快適性は得られるか?など、もし居住が難しいと思った場合は居住をあきらめ売却を検討します。

  • 売却する

長期的な右肩上がりの米国市場とは異なり、日本の不動産は築年数が経過するほど評価額は下がります。特に親の実家など古い物件では満足する価格での売却は難しく、場合によっては買い手が見つからない状況も考えられます。更地にして土地を売却という方法も考えられますが解体費を負担しなければなりません。こうした点も確認しながら対応を検討します。重要なことは早めに不動産業者等へ相談することです。

  • 賃貸する

相応の価格で借り手を見つけるにはリフォームの必要もあります。また賃貸契約の家主として責任なども発生します。そうした収益性、デメリット等を確認しながら対応を検討します。やはり早めに不動産業者等へ相談することです。

4.注意すべき事 ~相続による「空家の処分」と「名義変更(相続登記)」は別手続き

相続による親の実家の取得について注意しなければならいこととして、相続登記手続きがあげられます。やや専門的な話になりますが、親の実家の所有者(登記上の名義人)は通常親(父、母、又は両親)になっています。相続が発生して相続人(通常は配偶者または子)が取得となれば、所有者の変更(相続登記)手続きが必要となります。売却や解体など不動産の処分は所有者が行うので、まずこの相続登記を行いその後でないと処分できません。この点について知らない方や、知っていても忙しくて忘れてしまっているという人がよくいますのでご注意ください。いざ売却する、という時点で不動産の所有者が親のままだと売却することができません。また2024年1月から相続登記が義務化され、一定期間内に理由なく相続登記していない場合は過料(金銭ペナルティ)が発生する場合もあります。

いかがでしょうか? 尚この問題については、国や地方自治体レベルでも重要視しており、空き家の売買、賃貸のための空き家バンク登録制度や、解体時の助成金制度を始めているところもあります。興味のある方はインターネット等で検索し調べてみることをお勧めします。

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